鵞足炎について
鵞足炎とは?
膝関節の上内側にある骨に付着している腱と滑液包が摩擦されて、炎症が起き痛みが出現している状態のことを言います。
鵞(ガ)足とは、膝内側の5cm程度下に脛骨という、すねの骨に縫工筋・薄筋・半腱様筋の3つの筋肉が付着している部分です。
ガチョウの足のように付着していることから「鵞(ガ)足」と言われています。
特に、変形性膝関節症の高齢者やランニングなどのスポーツで多く発症します。
症状
初期症状は、膝内側の5cm下の患部の圧痛や運動後の重だるさになります。
症状が強くなると運動中に患部が痛み出し、ズキンズキンと安静時にも痛みが出現します。
腫れも初期だとあまりありませんが、炎症が強くなると患部に腫れぼったい浮腫が出ることもあります。
痛みの原因は?
痛みの原因は、鵞足に付着している腱と滑液包が膝の運動により摩擦されて炎症が起こることです。
滑液包とは、膝をはじめとした関節周囲に存在する小さなゼリー状の袋です。
少量の液体が含まれており、骨と軟部組織の間に存在し、摩擦を軽減するクッションとして機能します。
正常では、膝の運動で摩擦されても炎症が起こるほどのものではないのですが、縫工筋や薄筋、半腱様筋の筋肉が硬くなり腱に伸長ストレスがかかり、動きが悪くなることで滑液包と摩擦が起こります。
そのほか、膝関節が内側に入る動作や足先が外側に回旋するような動きの繰り返しで、腱が骨に押し付けられて摩擦が起こり炎症が起こることもあります。
鵞足炎の厄介なところが、痛みがなくなっても根本的なストレス(悪い癖がついているなど)を修正しない限り、頻繁に痛みが出てしまい慢性化してしまうことが多くあります。
鵞足炎に限らずに炎症が強いときには(熱を持ったり、発赤したりします)、細いはずの毛細血管が拡張し、数も神経とともに増えていきます。
炎症が治まってくると、毛細血管は徐々に数は少なくなって行きますが、神経はなかなか少なくならずに過敏な状態になり、痛みを感じやすくなります。
なので、少し触るだけで痛みが強く感じるはそのためです。
鑑別方法
問診
外傷のような怪我以外に起こるものとして、繰り返しの摩擦(使い過ぎ:オーバーユーズ)です。
そのため、問診でよく聞くことは、痛みの度合いの他に、直近で「膝に負担をかける環境にあったか?」どうかを聴取します。
- 練習量が急に増えた
- 準備運動、ストレッチ不足
- 靴を変えた
- 下半身メニューに練習内容が変わった
などです。
もともと膝を痛めていたりの既往があった場合も起こりやすいです。
触診・各種検査
触診位置は、膝の関節から5cm程下に下がった場所にあり、範囲は約3cm程ですが重症度で広くなることもあります。
痛みが強い場合は、腫れており、少し熱感もある場合もあります。
鵞足炎は、付着部の縫工筋・薄筋・半腱様筋に伸長ストレスを与えるテスト法やスプリットスクワットのような膝を内側に入れる(外反動作)ストレスを加えて痛みが再現されるかを確かめます。
当院の施術
まずは、患部の状態を確認し、急性期か慢性期かを判断します。
急性期(痛みが出て数日)の場合は、痛みが強く炎症も強いため、患部の安静や炎症を抑えるアイシングなどを行います。
そして、患部外へのアプローチを行います。具体的には、股関節や足関節への施術を行い、膝に加わるストレスを軽減させることをメインにします。
慢性期だと、炎症が治まっていることが多いため鵞足部の筋膜や筋腱の滑走性を出すように施術を行います。
患部への施術の後は、繰り返し加わるストレスを改善させないとまた同じ痛みが生じるため、全身的な運動の修正を行います。
【ステップ1】緩める
最初のステップ1として、緊張している筋肉の柔軟性を改善させることや、組織間や筋膜の滑走性をさせます。
膝関節は、股関節や足関節をまたいでいる筋肉が多いため膝関節の周りのみではなく股関節や足関節にもアプローチを行います。
アプローチする組織は、筋肉だけでなかく靱帯、腱、関節包などしびれが出現している際は、神経にも施術を行います。
【ステップ2】整える
ステップ1で筋肉や組織間の滑走性が出たら、関節可動域を整えていきます。
膝関節には伸ばしたり、曲げたりする蝶番のような関節運動の中に少しの回旋も入ります。その回旋の動きが制限されると膝の伸びや曲げることが制限されて、歩行運動や階段動作に影響があります。
生理的な関節運動を行えるように徒手的に整えていきます。
【ステップ3】鍛える
ステップ2で整えた関節運動を維持できるように筋肉の強化をしていきます。
運動療法の筋力強化により痛みが軽減する症例が多くあります。
しかし、痛みがなくなっても根本的なストレス(悪い癖がついているなど)を修正していきます。
そして、自宅でも簡単に行えるようなメニューになりますので継続して、再発予防ができます。