膝外側側副靱帯損傷(LCL損傷)について

膝外側側副靱帯損傷(LCL損傷)とは?

膝LCL損傷は、膝関節の側方動揺を制御している外側にある靭帯が損傷することを言います。
靭帯は筋肉とは違い収縮能力がなく、関節が許容範囲外まで動くことを制御して関節が外れないようにしています。

膝LCL損傷は、内側側副靱帯損傷よりも負傷することは稀で、強い衝撃が加わるラグビーや柔道のスポーツや交通事故(バイクなどの接触事故)などで負傷しやすいです。

症状

  1. 外側の膝痛: LCL損傷により、膝の外側に痛みが生じることがあります。この痛みは、特に膝を曲げたり伸ばしたりするときに感じられることがあります。
  2. 腫れ:LCL損傷により、膝の外側部分に腫れが生じることがあります。腫れは損傷の程度によって異なりますが、軽度の場合でも見られることがあります。
  3. 不安定感:LCL損傷により、膝の外側に不安定感を感じることがあります。特に膝を負荷するような動作を行ったときに不安定感が増すことがあります。
  4. 跛行:LCL損傷により、膝を支えるのが難しくなるため、歩行時に跛行(ひきずり歩き)を伴うことがあります。
外側側副靱帯

痛みの原因は?

膝外側側副靭帯(LCL)の損傷や問題の原因には、以下のような要因が関与しています。

  1. 外傷:膝への外部からの衝撃や急激な方向転換、膝に対する強いストレスなどが原因でLCLが損傷することがあります。例えば、スポーツ中の突然の方向転換や転倒、交通事故などが挙げられます。
  2. 負荷:長期間にわたる膝への過度の負荷や使い過ぎ、反復的な動作などがLCLの過度なストレスを引き起こし、損傷の原因となることがあります。例えば、長時間の走行や歩行、激しい運動などが考えられます。
  3. 膝の不安定性:膝関節の不安定性や他の靭帯の損傷によって、膝外側側副靭帯に負担がかかり、損傷が生じることがあります。

鑑別方法

膝の外側側副靭帯(LCL)の損傷は、膝内側側副靭帯(MCL)と同様に、痛みが強い場合は靭帯の断裂や半月板損傷などが疑われるため、鑑別が難しくなります。

損傷のグレードによっては、痛みや腫れ、膝の不安定性が生じることがあります。

  • グレードⅠ:軽度の損傷であり、圧痛や運動痛が軽度であり、腫れもわずかであるか見られない場合があります。関節不安定性も感じられず、歩行時にも痛みがほとんどありません。
  • グレードⅡ:中等度の損傷であり、運動痛や圧痛が強く現れ、腫れも確認できることがあります。歩行時に痛みを感じ、体重をかけると痛みが増すことがあります。関節の不安定性もわずかに感じられる場合があります。
  • グレードⅢ:重度の損傷であり、靭帯の断裂を疑うほどの強い痛みがあり、関節の不安定性を自覚することがあります。膝を動かすと不安定さを感じ、病院や整形外科での診断や治療が必要です。

腓骨神経麻痺

外側側副靭帯(LCL)の損傷には、稀に腓骨神経麻痺が伴うことがあります。

腓骨神経は、太ももの中間から足先までを通る神経であり、膝周辺では膝の外側を通っています。したがって、LCL損傷に伴うダメージが腓骨神経に影響を与えることで、膝から下に一部の感覚麻痺を引き起こす可能性があります。

膝の外側から足の甲にかけての感覚が鈍くなったり、しびれたり、足首から先を上に反らすことが困難になったりすることがあります。

軽度の膝LCL損傷の場合でも、損傷に伴う炎症が腓骨神経を圧迫することがあり、その結果、軽度のしびれなどの症状が現れることがあります。

問診

  1. 痛みの出現:痛みの出現がどのように始まったか、急性の外傷があったか、または徐々に症状が悪化してきたかを尋ねます。
  2. 症状の特徴:痛みの場所や程度、腫れの有無、膝の安定性や不安定感、および他の症状(しびれや感覚異常、筋肉の弱さなど)について詳しく聞きます。
  3. 痛みの特性:痛みの性質(鋭い、鈍い、局所的など)、発症時や特定の動作時に痛みが増すか減るか、および安静時に痛みがあるかどうかを詳しく確認します。
  4. 日常生活への影響: 症状が日常生活や仕事、スポーツなどの活動にどのような影響を与えているかを理解するために、日常生活への影響についても問診します。

これらの情報を収集することで、適切な診断や治療計画を立てるための手掛かりを得ることができます。

触診・各種検査

膝の外側側副靭帯(LCL)の損傷と腸脛靭帯炎(ランナー膝)を鑑別する際には、検査として側方動揺テストが行われます。

検査法は以下の通りです。

  1. 検査者は負傷者を仰向けにさせます。
  2. 患側の膝を軽度に曲げて行い、内側から外側の靭帯を開かせるように力を加えます。
  3. 次に、膝を完全に伸ばして同様のテストを行います。

検査の結果に応じて、次のグレードに分類されます。

  • グレードⅠ:膝を軽度に曲げた状態でも痛みはあまりなく、靭帯も加わるストレスに耐えれる伸長感を感じられます。
  • グレードⅡ:膝を軽度に曲げた状態で痛みが出現し、靭帯の緩み感を感じることがあります。膝を伸ばした状態では痛みがなく、靭帯の緩さも感じません。
  • グレードⅢ:膝を曲げたり伸ばしたりする際に痛みが強く出現し、靭帯が切れている可能性が高いため、関節の不安定性が高くなります。

これらの検査を行うことで、膝の外側側副靭帯の損傷を適切に評価し、治療計画を立てることができます。

当院の施術

まず、患部の状態を確認し、靭帯の損傷の程度を判断します。
急性期(痛みが出て数日)の場合は、痛みが強く炎症も強いため、患部の安静やアイシングなどを行い、炎症を抑えます。

次に、患部外へのアプローチを行います。具体的には、股関節や足関節への施術を通じて、膝に加わるストレスを軽減します。

慢性期の場合は、炎症が治まっていることが多いため、靭帯の組織や筋膜、筋腱の滑走性を出すように施術を行います。

施術後は、繰り返し加わるストレスを改善するために、全身的な運動の修正も行います。

これらの施術を継続的に行うことで、患部の痛みや不快感を軽減し、回復を促進します。

【ステップ1】緩める

膝に衝撃がかかり痛みを感じると膝関節を安定させるために筋肉を緊張させます。その緊張が痛みを出現させます。
最初のステップ1として、緊張している筋肉の柔軟性を改善させることや、組織間や筋膜の滑走性をさせます。

靭帯は、筋肉とは治癒過程が違います。靭帯は損傷により緩んだりすると徒手や物理療法では元の状態に戻すことができません。そのため、靭帯の緩さを補強するように筋肉が負担を受けて、緊張による痛みが出現します。

【ステップ2】整える

ステップ1で筋肉や組織間の滑走性が出たら、関節可動域を整えていきます。

膝関節には伸ばしたり、曲げたりする蝶番のような関節運動の中に少しの回旋も入ります。その回旋の動きが制限されると膝の伸びや曲げることが制限されて、歩行運動や階段動作に影響があります。

生理的な関節運動を行えるように徒手的に整えていきます。

【ステップ3】鍛える

ステップ2で整えた関節運動を維持できるように筋肉の強化をしていきます。
運動療法の筋力強化により痛みが軽減し、関節の安定にも作用します。

緩んだ靭帯は関節を制御する能力が低下します。その制御の補助として筋肉が働きます、強度の高い運動を行うときは、テーピングで補強しないと膝の不安定性が残存するので、パフォーマンスが低下します。

不安定のまま、運動を継続すると、半月板などにも影響して不安定感が助長されます。

運動などをする予定がある方は、強化は必ず行わないと将来、変形性膝関節症などで手術の必要性が高くなります。

膝の外側側副靭帯(LCL)の損傷は、適切な治療を受けることが重要です。
負傷直後では、病院に行きレントゲンでの骨の損傷がないか確認することと靱帯の断裂が無いかの確定診断を受けることをお勧めします。

整骨院では、症状や損傷の程度に応じて適切な施術を行い、痛みの軽減や機能の回復をサポートします。
早期の治療を受けることで、回復プロセスを促進し、再発を防ぐことができます。

痛みが軽減したから復帰してしまうと機能の回復やボディコントロールがうまくいかないために再発する可能性が高いです。

ご自身の健康を守るためにも、専門家の手厚い治療を受けることをお勧めします。