伏在神経絞扼障害について
伏在神経とは?
伏在神経は、大腿神経(太ももの前面)から分岐して膝の内側を通り、内転筋裂孔と内転筋腱板で構成されたトンネルの内転筋管(Hunter管)を進み、下降して膝関節の内側にある縫工筋腱貫通部を通ります。
この管は、伏在神経だけでなく大腿動脈や大腿静脈も通過します。
内転筋管(Hunter管)や縫工筋腱貫通部で伏在神経が絞扼されると、伏在神経絞扼障害(Hunter管症候群)の症状が現れます。
症状
症状としては、膝関節内側から下腿内側にかけての痛みやしびれ、四つん這いの膝の圧迫による放散痛などが特徴です。
明確な外傷がなく、膝関節内側から下腿内側にかけての広がる痛み(ボヤッとした痛み)がある場合、伏在神経絞扼障害の可能性が考えられます。
症状には、重だるさ、膝を曲げたり伸ばしたりする際の痛み、階段の上り下り時の不快感、運動後、歩行後のだるさなどがあります。また、痛みやしびれが手の平サイズの範囲に沿って広がることもあります。
痛みの原因は?
Hunter管や縫工筋腱貫通部を構成している内転筋群や内側広筋、縫工筋の緊張や股関節の動作による神経の伸長によって、痛みやしびれが発生します。
さらに、変形性膝関節症の治療において人工膝関節全置換術(total knee arthroplasty:TKA)などの手術で筋肉を切開した際に神経が損傷されると、同様の症状が現れることがあります。
鑑別方法
問診
明確な受傷がなく出現する場合もあるので、膝を打ちつけたことがある場面があったが確認します。
そのほかにも、膝関節の手術の既往、神経症状の既往があるかどうかも確認します。
- 寒冷で痛みが増悪するか?
- 安静時痛があるか?
- 痛みの性質がピリピリするかどうか?
- 痛みを指ひとつで示せるかどうか?
触診・各種検査
伏在神経絞扼障害の検査として、痛みの出現している範囲が伏在神経の支配領域と一致しているかどうかが重要になります。
そして、ピンポイントの圧痛では緑色で記した貫通部位にあり、その部位を叩打もしくは圧迫することで出現する痛みはチネル徴候といわれています。
膝内側の痛みとして「鵞足炎」や「変形性膝関節症」と症状が類似するので、鑑別が必要です。
原因でも記載して通りに、貫通部位の筋肉をストレッチして神経を絞扼させたりすることで症状の再現性を確認します。
当院の施術
【ステップ1】緩める
縫工筋や内転筋群の筋緊張が神経の絞扼に関与することが一般的であり、そのためにはまずこれらの筋肉を緩めることが重要です。上記に記載した絞扼部位になる筋肉を少し圧迫することで、症状が軽減することがあります。
さらに、伏在神経自体の滑走性不足も痛みやしびれの原因となることがあり、神経の滑走性を改善するストレッチも行われます。
また、変形性膝関節症の手術後などでは、皮膚や筋膜の癒着による問題が考えられるため、癒着を剥がすリリースも行います。
【ステップ2】整える
縫工筋や内転筋群がなぜ緊張したのかの原因を追求して、関節のねじれを改善する根本にアプローチしていきます。
下腿部が大腿部よりも外旋(足先が外に向く)してしまうと筋肉や神経に伸ばされるストレスがかかるために痛みやしびれに関係していきます。
運動時の膝や股関節足首に関しても、負担がかかっていることもあるので、運動修正も行います。
【ステップ3】鍛える
緩めるだけではなく、筋肉の収縮運動も出していき負荷に強い筋肉を作っていきます。
そのほかに、変形性膝関節症の手術後にも出現するために手術後のトレーニングも併用して行います。
伏在神経障害は、腰部ヘルニアなどのしびれや痛み、変形性膝関節症の痛みと勘違いすることがあるので慎重に鑑別することが求められます。
痛みの改善は早期に効果が出ることがありますが、しびれに関しては長期間の施術が有することがあるので自宅でのケアも行うことが大切になります。