内側側副靱帯損傷(MCL損傷)について
内側側副靱帯損傷(MCL損傷)とは?
靭帯は、関節と関節をつなぎ、関節の安定を担っている強靭な組織になります。
膝MCL損傷は、膝関節の側方動揺を制御している内側にある靭帯が損傷することを言います。
靭帯は筋肉とは違い収縮能力がなく、関節が許容範囲外まで動くことを制御して関節が外れないようにしています。
主にスポーツによる損傷が多く受傷機転として、接触型と非接触型に分けられます。
接触型:膝に直接外力が加わり損傷すること。例)ラグビーや柔道などの転倒やタックルで直接負傷する
非接触型:ダッシュの繰り返しやジャンプ着地など直接外力が加わるのではなく、プレーの動作中など膝を捻ったりして起こることが多い。例)サッカーなど相手をかわそうとして、切り返した時など
損傷の比率では、非接触型のほうが多いとされています。
症状
膝MCL損傷の主症状は「痛み」「腫れ」が強く出ます。
膝MCLは、膝内側を幅広く覆っており関節包や滑液包、半月板、筋腱膜などと関与している靭帯になります。そのため、損傷があると近隣の組織まで炎症が波及して痛みが強く出現します。
なので、体重をかけても、曲げ伸ばしのような膝を軽く動かしても痛みを感じます。
そして、関節内ではなく、外にある靭帯であるため、腫れや内出血も確認できます。
重症度合いで完全断裂や部分断裂が生じることもあり、その場合は膝の不安定性(グラグラする)も出現します。
痛みの原因は?
痛みの原因は、靭帯が傷つくことによる損傷で、炎症が起こり痛みが発生します。
膝の外側からの大きな衝撃や膝が内側に入る(外反動作)ことで、内側の靭帯が伸長されて関節が開くようなストレスが加わり損傷します。
接触型のように一回の外力により負傷する場合は、靭帯の他に骨挫傷や半月板損傷など重度になることも多くあります。
非接触型のように一回の外力ではなく繰り返しのストレスが徐々に加わり、何らかのきっかけで起こることもあるため練習動作やフォームの不具合もある可能性が高いです。
他には、スポーツ会場の状態(雨でよく滑る、芝生でひっかかるなど)も影響します。
鑑別方法
膝MCL損傷の、痛みが強い場合は靭帯の断裂や半月板損傷などがある可能性があるため鑑別が難しくなります。
損傷グレードによって痛みや腫れ、膝の不安定性も生じることがあります。
グレードⅠ:軽度な損傷、圧痛も運動痛も軽度で腫れも見られない(あっても少し)。関節不安定もない状態。歩行時痛なし
グレードⅡ:運動痛や圧痛も強く出ており、腫れも確認できる。歩行時痛が出現しており体重をかけると痛みがある。関節の不安定は少しある状態。
グレードⅢ:断裂を疑う。痛みも強く、関節の不安定性を自覚する(膝を動かすとグラグラする感じがある)病院や整形外科へ通院必要。
※膝MCLは、前十字靭帯や内側半月板にも関係しているためにグレードが高くなるほど同時に損傷している可能性が高い。
問診
負傷した本人は、負傷した場面を覚えていない、よくわからないと言われることが多いです。
そのため第三者に確認したり、スポーツならば動画を確認することもあります。
問診で重要なのは、負傷した際に靭帯の切れる感覚などの膝内側の違和感などです。
あとの検査でも判断することにもなりますが、重度の損傷の場合は、病院や整形外科に受診することになります。
非接触型でも記載したのですが、練習量の増加やフォームの変更など、負傷する前の環境も聴取します。(のちのリハビリに関係あり)
触診・各種検査
膝MCL損傷は、痛みの部位がはっきりしており、指1本で示せすことができます。赤色や青色の部分に圧痛や動作時痛を訴えることが多いです。
同じような部分を中心に腫れも確認できます。
スポーツ現場でもよく行われる検査として、側方動揺テストがあります。(鑑別方法のグレードも参照ください)
検査法:負傷者を仰向けにさせ、患側の膝を①軽度曲げて行うのと②膝を完全に伸ばして、外側から内側の靭帯を開かせるように力を加えます。
グレードⅠ:①②とも痛みはあまりなく、靭帯も加わるストレスに耐えれる伸長感を感じられる。(体験者からは少し伸ばされている感じ)
グレードⅡ:①に関して痛みが出現して、少し靭帯の緩み感を感じる②は痛みもなく靭帯の緩さも感じない。(体験者からは痛みと少し膝が不安定な感じと言われることが多い)
グレードⅢ:①②ともに、痛みが強く出現します。そして靭帯が切れている可能性が高いので、①②ともに関節の不安定性が高く、側方への制御が機能しなくなります。
この状態では、すぐに病院もしくわ整形外科に通院して固定をすることを強くおすすめします。
当院の施術
まずは、患部の状態を確認し、靭帯の重症度を判断します。
急性期(痛みが出て数日)の場合は、痛みが強く炎症も強いため、患部の安静や炎症を抑えるアイシングなどを行います。
そして、患部外へのアプローチを行います。具体的には、股関節や足関節への施術を行い、膝に加わるストレスを軽減させることをメインにします。
慢性期だと、炎症が治まっていることが多いため靭帯の組織や筋膜や筋腱の滑走性を出すように施術を行います。
患部への施術の後は、繰り返し加わるストレスを改善させないとまた同じ痛みが生じるため、全身的な運動の修正を行います。
【ステップ1】緩める
最初のステップ1として、緊張している筋肉の柔軟性を改善させることや、組織間や筋膜の滑走性をさせます。
靭帯は、筋肉とは治癒過程が違います。靭帯は損傷により緩んだりすると徒手や物理療法では元の状態に戻すことができません。
そのため、靭帯の緩さを補強するように筋肉が負担を受けて、緊張による痛みが出現します。
【ステップ2】整える
ステップ1で筋肉や組織間の滑走性が出たら、関節可動域を整えていきます。
膝関節には伸ばしたり、曲げたりする蝶番のような関節運動の中に少しの回旋も入ります。その回旋の動きが制限されると膝の伸びや曲げることが制限されて、歩行運動や階段動作に影響があります。
生理的な関節運動を行えるように徒手的に整えていきます。
【ステップ3】鍛える
ステップ2で整えた関節運動を維持できるように筋肉の強化をしていきます。
運動療法の筋力強化により痛みが軽減し、関節の安定にも作用します。
緩んだ靭帯は関節を制御する能力が低下します。その制御の補助として筋肉が働きます、強度の高い運動を行うときは、テーピングで補強しないと膝の不安定性が残存するので、パフォーマンスが低下します。
不安定のまま、運動を継続すると、半月板などにも影響して不安定感が助長されます。
運動などをする予定がある方は、強化は必ず行わないと将来、変形性膝関節症などで手術の必要性が高くなります。